「子どもの浣腸を探しているのですがどこにありますか」
と、30代くらいの男性のお客様。
お子さまは3才だといいます。
売場をご案内し商品を差し出すと、再びお客様は尋ねられました。
「これ、前に使って、全然出てこなかったんですが、そっちのちがう方を使ってもいいんですかね」
「ちがう方……おとな用ということでしょうか」
「はい」
効果を感じないからおとな用を使用するということ。
例えば、解熱鎮痛薬を子ども用のアセトアミノフェンが効かないから、大人用のイブプロフェンを飲ませてもいいか。
大人用のくすりを半分に割れば飲ませてもいいか。
答えはノーですよね。
絶対にやってはいけないことです。
では、今回は浣腸です。
「ご遠慮していただいた方がいいですね……浣腸ですが、子ども用とおとな用の違いは配合量です。成分はいっしょになります」
「そうなんですね」
「子ども用は、ちゃんとお子さまに合わせた配合量となっています。おとな用を使用したからといって、効果が増強するわけではなく、むしろかえって悪影響を及ぼすリスクを高めるおそれがあります。絶対にやめていただきたいことですね」
「わかりました」
「それから、お薬の副作用が影響で万が一何かあった場合、用法容量外で使用していると受けられるはずのいろいろな保障が受けられない可能性もありますので、必ずそこは守っていただくべきかと思います」
「ああ……わかりました、もう一度子ども用で試してみます」
追記:2019年12月23日
SNSでフォローいただいている登録販売者さんから、おとな用と子ども用の浣腸では、ノズルの長さも違うとの指摘をいただきました。
嫌がって動いてしまうかもしれないお子さまに、おとな用の長いノズルの浣腸は、腸を傷つけてしまう危険性が高まりますので、やはり子どもに大人用のものを使用するのは絶対にやめるべきことだと再確認しました。
理解された上で商品を購入いただくというので念のために尋ねました。
「以前も使用したことがあるようですが、便秘が続いているのでしょうか。いつ頃から症状が出ているのですか」
「時々こういうことがあるんです。それでこれを試してみるんですけど、あんまり効果がないように思えて」
「浣腸って、さすとすぐに出したくなるのですが、ある程度我慢しないとお薬が出ていくだけで便が出るまでに至らないんですよ」
「そうなんですね」
「はい、最低でも3分、できれば5分は我慢していただきたいところです。お子さまは3才ということで、我慢させるのは大変かと思われますが、そうすることによって結果は変わってくるかと思われます」
「そうなんですね……」
「それでも出ない、便秘が続くというようであれば、一度病院でご相談された方がいいと思います。やはり小さい子に関しては、市販薬よりお医者さんに診てもらった方が、飲めるお薬もありますし、安心ではありますから」
「わかりました。様子を見て、病院へ行くか決めてみます」
「お大事になさってください」
お子さまに大人用のくすりを飲ませるという考えをする人は実際にいらっしゃいます。
お客様への一つ一つの声掛けを大切に……
まずは「誰が飲むお薬」なのかをしっかり聞き取るべきだなあと感じました。
今日もお客様にとっていい選択ができますように。