60代くらいの男性に解熱鎮痛薬の棚の前で声をかけられました。
片頭痛がするため、くすりを選んでほしいと言います。
目次
頭痛の詳細を聞いてみた
「片頭痛でふだん飲んでらっしゃるお薬はないのでしょうか。病院で治療中とかでは」
「病院には行ったことないんだけど、頭の前の方が、痛むんだよね」
「前の方、ですか。どんな風に痛みますか」
「こう、チクチク痛む感じかな。そうしょっちゅうじゃないんだけど、前にもこう、痛んだことがあるから、片頭痛だと思うんだけど」
「なるほど……ちなみに、安静にしているとラクになるとか、様子で痛みの変化はありますか」
「いや……そんなに変わったりはしないと思うけどね」
頭痛薬以外の服用薬を聞いたところ、血圧と、便秘薬を病院で処方されているようでした。
登録販売者は病気などの診断はできない、のですが……
ここまで、お客様のお話を聞いた私の感覚としては
「本当に片頭痛なのかなあ……」
という思いがありました。
片頭痛の症状の特徴
お客様の訴える頭痛の特徴は、私が知っている片頭痛の特徴とは異なっていました。
痛み方
片頭痛の痛み方といえば
「ズキンズキン」「ドクンドクン」という脈打つような痛みが特徴です。
中には拍動感を感じない人もいるみたいですが、
「頭の中に心臓ができたような痛み」と表現される人もいらっしゃいます。
お客様は「チクチク」と表現されていた頭の痛み方。
少し片頭痛の特徴とは離れているように感じました。
部位
頭の片側、あるいは両側の、こめかみから目のあたりにかけて痛むといわれる片頭痛。
痛むときはこめかみをおさえるようなポーズをとりがちです。
この部分に関しても、お客様は「頭の前の方」と言われていたため、特徴とずれていると感じました。
発生頻度と持続時間
頭痛は突発的に起き、月に1~2回という人もいれば、多いときは週に1~2回起きるという人もいます。
持続時間は4~72時間程度といわれます。
発生して1~2時間で痛みのピークに達することが多いです。
頭痛の程度やその他の症状
痛みの具合は、日常生活に支障をきたすほどで、ひどいときには寝込んでしまいます。
階段の上り下りなど「動く」ことで痛みが増します。
ときには吐き気、嘔吐をともなうことがあります。
光や音、においなどにも敏感になることも、片頭痛の特徴のひとつです。
とはいえ、お客様の症状の伝え方のちがいだけで、もしかしたら本当に片頭痛かもしれません。
「もし、本当に片頭痛だとすると、市販薬を安易におすすめすることで、悪化させてしまうおそれもあるので、私としてはまずは一度病院を受診されることをおすすめしたいのですが……」
「そうしてみたいけど、今は連休中だし、なにより今、この痛みをなんとかしたいんだよね」
お客様のおっしゃることはもっともです。
ただ、市販薬には、片頭痛を根本的に治療する、専用のお薬というものはありません。
もし長い目で見て、治療をするのであれば、一度は病院で診てもらうことを伝えつつ、今回は片頭痛を考慮したお薬を選んでみることにしました。
お薬のご案内
お客様の症状の訴えを聞く限り、片頭痛ではない気もしますが……
そこは断定できないので、あくまでその可能性を考慮して、お薬をご案内しました。
呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
「胃腸が弱い方で、体の冷えが原因で頭痛が起こるタイプの人に向いている漢方薬です。片頭痛が効能にあります。足の冷えを感じることはありますか」
「うーん、とくに年中っていう訳ではない気もするけどね」
「そうですか……片頭痛は、吐き気や嘔吐を伴ったりもするようなので、そういった痛みのある人に効果がありますよ。痛みだすかな、という前兆に飲めると、かなり効果が発揮されるかもしれません」
ただ、お客様の体質にはどうもピンときていないようでしたので、ここは純粋に解熱鎮痛薬もご紹介します。
アセチルサリチル酸とアセトアミノフェン処方のお薬
「いろんな原因のパターンの頭痛を考慮して、本当はアセトアミノフェン単剤のお薬をご案内したかったのですが……今回はこちらを紹介します」
「それとはなにかちがうってこと?」
「はい、アセトアミノフェンといっしょに、アセチルサリチル酸という痛み止めが両方入っています。痛み止めの全体の配合量としては、多めのものになります」
アセチルサリチル酸が片頭痛にはたらくかは断言できないところですが……
アセトアミノフェン配合のお薬として、ひとつ提案をしてみました。
イブプロフェン単剤のお薬
「市販薬のイブプロフェン単剤で、成分量が最大のお薬です。他の市販薬であんまり効果が見られないという場合や、イブプロフェンのお薬をまだ試されたことがない場合はこちらも選択肢としてありかなと」
「成分量が最大ってことは、強い薬ってこと?」
「お薬を強い、弱いであまり表現はしないですが、同じ成分でも配合量が多いと、効果の得方が違うというのは考えられます」
アセトアミノフェンのお薬にも言えますが、配合量だけで取ると、市販薬の配合量は、医療用に比べるとおさえられています。
医療用の成分量で効果があっても、市販薬の配合量では足りない、なんてこともあるかもしれません。
あまりにもひどい頭痛を感じる場合は、いろんな可能性を考えても病院受診をした方が改善の選択肢は広がります。
お客様の選択
最終的にお客様の判断にゆだねた結果、イブプロフェン単剤のお薬を選ばれました。
「もし、ひんぱんに頭痛が起きて、月10回とか、痛み止めを飲まなきゃならない状態のときは、すぐ病院へ行ってくださいね」
「そうします。とりあえず、これで様子を見てみます」
「病院へ行くと、痛みが起きた時におさえてくれるお薬もありますが、痛くなるのを予防してくれるお薬とか、いろんな治療法が存在しますので、とても有意義だと思いますよ。ぜひ考えてみてくださいね」
「はい、どうもありがとうございます」
片頭痛を訴えるお客様が来たら
今回のように、ご自身の判断で「片頭痛かも」と思われている人はけっこういらっしゃいます。
でも、片頭痛はやっぱり他の頭痛とは特徴が全然違うものです!
- 脈打つような痛み
- 強い痛みが数時間から数日続く
- 日常生活に支障をきたすような痛み
- からだを動かすと痛みが増す
- 吐き気、嘔吐を伴う
- 音、光、においに敏感になる
などなど、複数当てはまる場合は、片頭痛を疑ってみるといいかもしれません。
お客様によっては、症状の伝え方が苦手な人もいますので、こちらから情報を引き出せるようにしたいものです。
基本的には受診勧奨、それでも今なんとかしたい場合、軽い症状の人には単剤のお薬をご案内。
あまりにお薬を飲みすぎると頭痛を引き起こす原因にもなりますので注意が必要ですね。
頭痛でお悩みはつらいことと思いますので、いろんな情報を提供して、お客様の選択肢を広げて差し上げたいです。
元気に仕事ができることに感謝します。
今日も素敵な一日になりますように。