「立ちくらみがするんだけど、なにかいいくすりない？」
と、尋ねてこられたのは、60代くらいの男性のお客様です。
目次
立ちくらみの様子を詳しく聞く
「立ちくらみ、最近強く感じるようになった様子ですか」
「元々たまに起きるけど、最近少し気になるかな。立ち上がるときにふらっとするというか」
「ぐるぐる回るような感じとかではないですか。あるいは、ちょっと意識が飛ぶような、そういうめまいでもなく」
「うーん、ふらふらって感じかなあ。ちょっと目の前が暗くなって」
お客様の言葉を聞く限りでは、よくある「ふわふわ、ふらふら」というようなめまいのように感じました。
気が遠くなるような、意識が飛びそうになるタイプのめまいは心血管疾患など重篤な疾患が隠れている場合があるといいます。
お客様の場合は「立ち上がる」などの行動を起こす瞬間のみの症状、いわゆる「立ちくらみ」だと、この時判断しました。
さて、立ちくらみに優れているお薬とはなんでしょうか。
乗り物酔いのくすりはめまいに使えるか
「立ちくらみって、めまいと同じなの？ じゃあ、酔い止めとか、そういうのがいいのかな」
「市販薬である酔い止めは、あくまで乗り物酔いのときに飲むものですからね……立ちくらみには使用しませんよ」
お客様からお薬の話を振られたため、確認のために服用薬を聞きましたが、飲み薬は使用していませんでした。
乗り物酔いは使用しない。
では市販薬で立ちくらみ改善というと、やっぱり漢方薬でしょうか。
立ちくらみを改善する漢方薬
ざっと漢方薬の棚を見たところ、ふたつの漢方薬に立ちくらみの文字を発見！
あまり触れたことのないお薬でしたが、証や配合生薬などを見比べて、お客様に尋ねます。
四物血行散
貧血気味だったり、低血圧の症状がある人に向いた漢方薬とみました。
「ご自身で血圧ってふだん測られていますか。低血圧とか、病院で言われたこととかは」
「血圧はいつも自分ではかっているよ。特に低い感じでもないかな」
数値ははっきりと言われませんでしたが、ご自身では通常とおっしゃいました。
降圧剤の服用もしていないので、高血圧ではないかもしれません。
「低血圧の人にってことは、血圧をあげるくすりなの？」
「血液を補ったり、血のめぐりをよくすることで、体質の改善を図っていくものですから、直接血圧をあげるのではないですよ」
四物湯、という漢方の処方がメインのこの漢方薬。
胃腸が弱い人には不快感が現れるかもしれません。
冷え症なども効能にあるため、体が冷えているのを感じる人に向いています。
苓桂朮甘湯
「胃腸の働きを高めてくれる処方なので、こちらは胃腸が弱い方でも飲めるお薬です。胃腸は弱い方ではないですか」
「胃腸は弱くはないけど、とくに低血圧でもないからこっちがいいのかな」
「そうですね、あとは、お小水の量が少ないとか、体の中に余分な水分がある人にも向いています」
ちょっと不安感があったりとか、心配事で起きる頭痛とか、めまいとかの体の不調にも有効です。
朝起きるのがつらい、めまいが起きる……という人に効果的な漢方薬です。
お客様の選択
わかる限りのちがいを説明して、あとはお客様に判断していただきました。
お客様は、苓桂朮甘湯を選ばれることに。
「お話を聞いている限りでは立ちくらみだと思うんですけど、もし頭が痛くなったり、耳鳴りが伴ったり、意識がどっか行くような、そんな風なめまいになった場合はすぐに病院に行ってくださいね。あと、これ飲んであんまり改善されないようなら、これ持って一度病院で相談されてもいいかもしれません」
「わかりました。どうもありがとう」
「お大事になさってください」
正直、生薬一個一個レベルで勉強したい
胃腸が弱いと飲めないとか、働きをよくするとか、どの生薬の作用で、どういう組み合わせだとそうなるとか……
一個一個知ってたら、もっと説明がスムーズだろうな～。
漢方薬むずかしい、けど、奥が深いから、ちゃんと勉強したらおもしろいですよね。
よ～し、頑張って勉強するぞ～。
それでは、今日も元気にいってらっしゃい～。