先日、厚生労働省医薬・生活衛生局総務課により、ある文書の一部改正が知らされました。
それは「薬事法の一部を改正する法律等の施行等について」の改正に伴う
「一般用医薬品販売制度に関するQ&Aについて」の一部です。
これによって、お薬を販売する現場(薬局または店舗)に勤務する従事者の名札に「氏名以外」の呼称を使用してもいい、ということになったのです。
文書のPDFは「こちら」で確認できます。
目次
「Q&A」どこが改正されたのか
今回改正されたのは「一般用医薬品販売制度に関するQ&Aについて」(以下、Q&A)の「問1」に関する回答です。
問1の内容は以下のとおり。
問1 薬事法施行規則(昭和36年厚生省令第1号)第15条の2 (第142条において準用する場合を含む。)において、薬局開設 者及び店舗販売業者は、その薬局又は店舗に勤務する従事者に名札を付けさせることとされているが、
1 この名札には、姓のみを記載することで差し支えないと解してよいか。
2 「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に 関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について」 (平成 26 年8月 19 日付け薬食発 0819 第1号厚生労働省医薬食 品局長通知)においては、「登録販売者の名札には、単に「登録販売者」と記載するほかに、「医薬品登録販売者」と記載しても差し支えない」とされているところ、名札以外の掲示等の表示 についても、同様に「医薬品登録販売者」と記載しても差し支 えないか。
「一般用医薬品販売制度に関するQ&Aについて」の一部改正について
従来、薬局または店舗に勤務する従事者(薬剤師や登録販売者)は「フルネームが書かれた名札」をつけるルールでした。
問1のひとつは、この名札を「姓のみ」の記載でもいいのかということを尋ねています。
もうひとつは、最近多くのドラッグストアなどのお店で、名札の登録販売者の表記を「医薬品登録販売者」としていると思いますが……
この「医薬品登録販売者」を名札以外にも使っていいかという質問です。
この問いに関しては、結論として「差し支えない」となっています。
で、今回私が取り上げたいのは最初の質問のほう。
その回答をカンタンにまとめると……
「名札には氏名を(名字も名前も)記載してほしい。けど最近いろんな問題や観点があるから、薬局開設者や店舗販売業者の判断で『姓のみ、氏名以外の呼称』の名札をつけても差し支えないよ」
となります。
つまり、無理に本名フルネームを名札に記載する必要がなくなったのです。
「氏名以外の呼称」とは何を指すか
では、この「氏名以外の呼称」とはなんでしょう。
回答はこのように続いています。
氏名以外の呼称としては、旧姓やビジネスネーム(仕事上で使用する名前であり、戸籍上の当該者の本名とは別の名前のこと。)等、社会通念上不適当でない呼称を用いさせること。
「一般用医薬品販売制度に関するQ&Aについて」の一部改正について
この文書から考えられるのに、自分の名前に一切触れないような名前でも記載してもよさそうです。
ただし、社会通念上不適切をどこまで取るかにもよりますが、さすがに「あーちゃん」「たろちゃん」みたいなニックネームぽいのは弾かれそうですね。
改正されたことにより起きるメリットは
では、この文書の回答が改正されたことによって、どんないいことがあるでしょうか。
私がちょっと考えるだけでも3つ浮かびましたので、ご紹介します。
ストーカー・カスハラの防止
これは、今回改正された回答の中でもはっきり明記してあるとおり……
「ストーカー被害やカスタマーハラスメントの防止等の観点」でこのような改正がされたといってもいいですね。
自分の名前を覚えるお客様が、必ずしも自分に対して友好的な感情を持っているとは限りません。
自分はお客様がどこに住んでいるなんていう人なのかわからないのに……
お客様は自分の本名フルネーム、勤め先、勤務日などを把握している。
ネットで自分の名前を検索されて、過去やさらなる素性を知られる可能性もあるし……
名指しで誹謗中傷を書かれるおそれもあります。
店員さんに親切にされたときは堂々と名札を見てアンケートにお礼の言葉を書いてみたいものですが……
そうされる以外に自分の名前を使われるのは嫌なものです。
店員さんが嫌な思いをしないためにも、氏名以外の表記が許されるのはとてもいいことですね。
仕事とプライベートの線引き
自分自身のマインドの問題にもなりますが……
仕事のときだけ自分の名前とちがう名前を名乗ることで、ある種ちがう名前の「キャラクター」として働くことができます。
ドラッグストア店員や登録販売者を「演じる」という感覚でしょうか。
そこに立つ自分は、日頃の自分とはまったくちがう「別人格」であり、仕事とプライベートの線引きがなされます。
私がブログの中だけで「あい」と名乗ることに近しい感じです。
いつもは引っ込み思案なあなたも、仕事で別名を名乗ることで元気であかるく接客できる日が来るかもしれません。
旧姓のまま働き続けられる
結婚してお嫁・お婿にいくことなどで、生まれてからず〜っと名乗ってきた名字が変わります。
従来はそのタイミングで、名札も新しい名字のものに一新されてきました。
でも、これからは旧姓を「ビジネスネーム」として名乗り続けることが叶うのです。
これにより、たとえば万が一配偶者と離婚、なんてことになったとしても……
もともと旧姓で働き続けていればお客様などにもそれを悟られることがありません。
自分のプライバシーが守られます。
ただし、これはあくまで「お店の名札」の表記のことです。
販売従事登録の登録事項に変更があった場合は、すみやかに保健所などへの手続きが必要になります。
変更手続きについて詳しくは、各都道府県の「販売従事登録」についての記載をチェック〜!
「より自分らしく働けるため」の一歩です
これまで「本名フルネーム」記載の名札において、不安な思い、不快な思いをしてきた人もいるかもしれません。
そういう思いが少しでもなくなるような改正かなと、私は前向きに捉えています。
従事者として誇りを持てる働き方ができますように。
やっぱり仕事は楽しく働けなくっちゃ!
自分らしくいきいき働ける社会になっていきますように。
それでは、今日も元気にいってらっしゃい〜!