今期から放送されているテレビドラマの「アンサングシンデレラ」は、主人公の薬剤師さんがお薬をなんでも味見したがる変態という設定を持っているようですね。
でもね~、その気持ち、すごくわかる。
味や使用感って、お客様からもよく聞かれます。
もし、とてつもなく苦いお薬だとあらかじめ知っていれば、飲みやすくする解決方法などもアドバイスできます。
とくに「漢方薬」の飲み方はよく聞かれます。
「漢方薬」ってだけで「苦いもの」と思われる人もいらっしゃいます。
入っている生薬によって味が変わるのをみなさんよく知りません。
さすがにまだまだ味見はしきれないので……
今回は、漢方薬の「味」について調べてみたのでここにまとめます。
生薬の味は「五味」という
人が感じる味は五種類に分けられるよ~ということで「五味説」というものがあります。
「五味」読み方と味の感覚
- 苦味(くみ、にがい)
- 甘味(かんみ、あまい)
- 辛味(しんみ、ぴりっとからい)
- 酸味(さんみ、すっぱい)
- 鹹味(かんみ、しおからい)
生薬の役割、作用というのはだいたい味で決まってきます。
そして漢方薬は、構成する生薬で味が変わります。
苦味のある生薬と漢方薬
イメージ通り、苦味の生薬って一番多いようです。
身体を冷やして熱をとりのぞく「寒性」の生薬が多いです。
「寒性」のものはからだの内側にはたらくイメージ。
苦味の生薬例
- 黄連(おうれん)
- 黄柏(おうばく)
- 黄笒(おうごん)
- 大黄(だいおう)
- 柴胡(さいこ)
などなど……
漢方薬では、
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)は、黄連、黄笒、黄柏と山梔子で構成されています。
大柴胡湯(だいさいことう)なども苦いようです。
甘味のある生薬と漢方薬
甘味の生薬は「補う」生薬です。
全身をめぐる「血」を補うのはもちろん、体のあらゆる組織を作り出すのをたすけるイメージです。
甘味の生薬例
- 甘草(かんぞう)
- 人参(にんじん)
- 当帰(とうき)
- 地黄(じおう)
などなど……
漢方薬では、
小建中湯(しょうけんちゅうとう)は、甘草に加え、膠飴(こうい)が構成されるので甘くておいしいです。
甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)も構成生薬の小麦、大棗、甘草ともに甘いため、神経がほっとするような漢方薬といえます。
辛味のある生薬と漢方薬
ぴりっとした辛さを感じるのが辛味の生薬。
「温性」のものが多く、「血」や「気」のめぐりをよくするイメージ。
スパイスに使われるような生薬がほぼここにあたります。
辛味の生薬例
- 生姜(しょうきょう)
- 呉茱萸(ごしゅゆ)
- 細辛(さいしん)
- 麻黄(まおう)
などなど……
漢方薬では、
麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)は、麻黄と細辛に加え、体を温める附子で構成されています。
小青竜湯(しょうせいりゅうとう)は、五味子の影響で酸味もありながら、辛味の生薬がふんだんに使われています。
酸味・鹹味のある生薬と漢方薬
酸味と鹹味のある生薬は中でも割合少ないようです。
酸味の生薬の役割は「収斂させる」ことです。
ゆるんだ組織を、きゅっとしめるイメージです。
しおからい味の鹹味は「水」を追い出して「陰性」を「陽性」にする役割。
便秘を緩和したり、瀉下の効果があるイメージ。
鹹味の生薬のほとんどは動物性のものといわれます。
酸味と鹹味の生薬例
酸味の生薬
- 五味子(ごみし)
- 山茱萸(さんしゅゆ)
鹹味の生薬
- 牡蛎(ぼれい)
- 芒硝(ぼうしょう)
などなど……
漢方薬では、
清暑益気湯(せいしょえっきとう)というお薬が、五味子を含みすっぱく感じるとされています。
塩からい漢方薬、というのはちょっと見つからなかったのですが……
たとえば、牡蛎なんかは、安中散(あんちゅうさん)などにも構成されています。
桂皮や生姜などの辛味の生薬や甘味の甘草なども構成されているので、果たして味は……
漢方薬は味や香りも感じながら飲むもの
ここまでいろいろな漢方薬の「味」について書いてきました。
中には強烈なものもあるのかもしれませんが……
実は、漢方薬の味や香りは、それ自体に薬効があるとされています。
だから、できればそれを感じることを含めて、お薬を飲んでいただきたいのです。
そうすることで、お薬の力が最大限に発揮されるんです!
漢方薬も、いまはエキス剤が多く出回っています。
その時点で煎じ薬よりも断然飲みやすくはなっている……はず。
この漢方薬のこの味は、この生薬が引き出しているのかも……
などと考えながらお薬を飲んでみるのも、けっこうおもしろそうですね!
みなさんも、漢方薬を飲む機会がありましたらぜひ味や香りを楽しみましょう~。
それでは、今日も素敵な一日になりますように!