お薬の接客で、私の中でわりと「ありがち」な相談がひとつあります。
この日も、40代くらいの女性のお客様から声をかけられました。
頭痛薬の売場の前でお悩みのようです。
目次
「もっといい頭痛薬ありますか」というご相談
「頭が痛いんですけど……どれがいちばんいいくすりですか?」
と、お客様。
「いいくすり」「効くくすり」を強くお求めになるお客様ってけっこういると思いますが、とくに頭痛薬(解熱鎮痛薬)で聞かれることが多いように感じます。
かぜ薬や胃腸薬は、症状を詳しく効くことで選択肢を絞ることができます。
では頭痛薬はどうやって答えるでしょうか。
私の場合、とりあえずこのふたつの質問は必ずしています。
「いい頭痛薬」選びで聞く質問
- ふだん使用している頭痛薬はありますか
- ふだんの頭痛とちがう感じはありますか
「ふだん使用している頭痛薬はありますか」
「いつも使っている決まった頭痛薬ってありますか。売場をご覧になって、これ、ってあったら教えていただきたいのですが」
と、尋ねると、ひとつの商品を指さすお客様。
「いつもはこれを使っています」
「そうですか。こちら、使ってみて効かない感じですか」
「いいえ、ちゃんと効きます。でも、もっといいくすりがあるって聞いたので」
なるほど……
ということで、もうひとつの質問を尋ねます。
「ふだんの頭痛とちがう感じはありますか」
「いま、頭痛いのって、ふだんとちがうな、くすりもあんまり効かないな、ていう感じはありますか」
「そういうことはないんですけど……」
「何日も飲み続けているのに治らないとか、生まれてこのかた感じたことのない痛みだとかは」
「そうではないです、一応、くすりを飲めばしばらくするとおさまります」
たまに「ふだんとちがう」という症状を教えてくださるお客様もいらっしゃいます。
ですが、こんなふうに
「ふだん使っているお薬でも問題ないけれどもっと効くお薬があれば試してみたい」
という感じで相談してくださるお客様がいらっしゃいます。
そういうお客様への回答は……
自分の体質と症状に合ったお薬が「いいくすり」
「なら、日ごろのお薬をお使いで問題ないと思いますよ。無理に変える必要はないです」
「え、そうなんですか。たとえば、このくすりとこのくすりでは違いがあるんじゃないですか」
お客様のおっしゃる通り、それらのお薬は、痛み止めの成分の内容がちがいます。
成分によって効果の発現時間や持続時間もちがいますし、効果の現れもちがってくるでしょう。
ですが……
「お客様がよく使われているのはアスピリンという成分の痛み止め。こちらはイブプロフェンという成分の痛み止めです。アスピリンを飲んで効く、という人にこのイブプロフェンが効くのかどうかは……その人の症状や体質によっても変わりますし、正直それは、飲んでみなければわからないのです」
つまり、この中のどれがいちばんいいお薬かなんていうのは、飲む人次第で全然変わるし、決められないのです。
お客様の症状や生活習慣などを聞いてヒントを得て、それに近い選択肢を提案するのが私たちのできる範囲です。
場合によっては受診勧奨の対象になります
「もしふだんのお薬じゃない選択肢をあげることがあるとしたら……」
「なにか選んでもらえるんですか」
「いえ、場合によって病院をおすすめすることになるかなと思います」
ふだんのお薬が効かない、つまり「いつもの頭痛じゃない」可能性がある場合は、他のお薬を下手に選ばず、私なら受診勧奨します。
その判断基準の一部として……
受診勧奨4つの判断基準
- 今まで感じたことのない痛みがある
- 下を向いたときあごが胸につかない
- 吐き気が伴ったり、光やにおいを過敏に感じる
- 2週間くらい頭痛薬を飲み続けている
などなど、いろんなことを聞いてみることがあります。
これは、お客様が自覚している内容によっては
「くも膜下出血」「片頭痛」「薬物乱用による頭痛」
などなど、市販薬の範囲でない原因が考えられることもあるからです。
効くと思って飲むくすりが一番効く
「ふだん通りのたまに起こる頭痛で、日ごろから選ばれているお薬があって、それで効果を感じているのなら、私はそれが一番いいお薬なんだと思いますよ」
「そうですか……」
「そうですよ。それに、効くとわかってて、効くと思いながら飲むと、本当にお薬って効くんですよ」
その言葉で背中を押されたのか、お客様はいつも使っている頭痛薬をおひとつ選んでお帰りになりました。
「一番いいお薬」「一番よく効くお薬」って、本当にいろんなお客様から求められますが、まずはお客様の状況をよく知ることで、最適な商品を選べたらいいなと思います。
それでは、今日も元気にいってらっしゃい~。