「誰にでもわかる言葉で、誰にも書けない文章を書きたい」
と言ったのは、作家の山崎ナオコーラさんですが、私自身も日頃の言葉選びは気遣っていたいなあと思うのであります。
「誰にでもわかる言葉」で何かを説明したり、とか。
いかにお客様目線で、お薬のことを簡単に、わかりやすく説明できるのかに、日々四苦八苦しています。
たとえば、市販薬のリスク区分の話。
みなさんはどうしているのだろう、と思うくらい説明が苦手です。
60代くらいの男性のお客様。
目薬を手に尋ねられました。
「疲れ目なのかよく視界がぼやけて、いつもは特に決まったものは使ってなくて、これとかこれとかこれを使ったことがあるんだけどね」
「はい」
「そしたらこれみんな第3類医薬品って書いてあるじゃんね」
「はい」
「でもこっちのは第2類って書いてあるんだけど、何がちがうの」
「何類っていうのはお薬のリスク区分で、中に入っているお薬の成分の種類でその数字が変わるんです」
「2類っていうのは3類よりあぶないってこと?」
お客様は心筋梗塞をやっているが、第2類医薬品を使用しても影響がないのかを心配されていました。
「3類より2類の方が、ただちに危ない、ということではありません。第2類医薬品には副作用などが起こった際、まれに入院レベルの健康被害が起こる可能性を含む成分が入っていますよ、という目印です。服用しても何も起こらない人は起こりませんし、第3類医薬品でも生活に支障が出るレベルでないけれど体に不調を起こすこともあります」
「1類っていうのは病院で出しているくすりのことでしょ?」
「第1類医薬品は市販薬ですが、薬剤師でないと売ることができません。これは市販薬として使われる経験があまりない成分が入っていたりして、安全性を考えなきゃいけなくてそうしてるお薬です。病院のお薬と同じ成分の市販薬は、2類にも3類にもございます」
特に持病に影響がないなら、第2類医薬品の目薬をさしたいというお客様。
「目薬の成分って本当に微量なので、全身に移る量も少ないからとくに緑内障などの目の治療をしているっていう訳でなければ、すぐに他の病気に影響することはそこまでないとは思います」
「じゃあ、こっち(第2類医薬品)の目薬を試してみようかな」
「ただ、お客様の場合かすみ目や疲れ目が主で、充血もなければかゆみがあるわけでもありませんよね。同じ疲れ目の目薬なのに第2類の目薬になるということは、成分の種類が増えているということです。その成分が果たして本当に必要かどうかですよね……」
「今まで使っていたものは、最初は効いている感じがするんだけど、だんだん効かなくなるから、他の目薬に変えちゃうんだよね」
「それだと正直、市販の目薬で解決できるレベルの話じゃない可能性もあるので、私としては眼科さんへ行って一度検査してみるのをおすすめしますが」
「今日はとりあえずこの目薬を買っていくよ」
「かしこまりました。あまりにも視界がよくならない、むしろ悪化しているような気がしたら、すぐに病院へ行ってくださいね」
今回お客様は商品を買われていきましたが、あれこれさしても症状がよくならないようであれば、余計なくすりの成分増やすより病院で検査がいいかなと思いました。
それにしても、リスク区分の説明が手ごたえなさ過ぎて……もっと上手に説明してみたいものだなあと思います。
今日もお客様にとってわかりやすい接客ができますように。