ホウ酸をお探しの年配の女性のお客様に声をかけられました。
時期的に殺虫でお使いなのかな、と、とっさに思う私。
売場をご案内し、商品を差し出すと
「となりにあるホウ砂? っていうの? は、ちがうものなの?」
と、尋ねられました。
ホウ酸とホウ砂の主な使い道を答えた
あんまり厳密な説明をしてもな、私もよくは知らないし……と思って
「ホウ砂は夏休みに子どもたちがスライムを作るのにお求めになります。ホウ酸はゴキブリ倒したりするのに使いますけど」
と、よく使われそうな用途の例を答えました。
すると……
「え、私、ゴキブリなんて倒さないわよ!」
どうやら目の洗浄でホウ酸をお求めのお客様だったようです……!
完全に思い込みでゴキブリ退治だと断定していた私。
最初に用途を聞くべきでした~。
たしかにホウ酸は、結膜嚢の洗浄、消毒にも使用します。
なので、商品の選択は正しいことを改めて説明しました。
「ホウ酸団子で使うホウ酸で、同じものなんですよ~。虫にとっては毒なんですね~」
と、私。
ところが、それを聞いてもお客様は ? な表情。
え、もしかして、ホウ酸団子って、あまり一般的な知識でない……?
ホウ酸団子とは
「ホウ酸団子」は、主にゴキブリをおびき寄せて駆除するための毒餌です。
- ゴキブリを誘うためのすりおろした玉ねぎを
- 小麦粉や牛乳で混ぜたお団子の中に
- 実は毒であるホウ酸もいっしょに混ぜておいて
- 食べに来たゴキブリが命を落とす
というしくみです。
食べてすぐに死ぬ、というのではなく、脱水を起こして干からびて死ぬのです。
文字にしていてけっこう残酷やな……
団子を何年か仕掛けているうちに、ホウ酸のにおいで「やばい」とゴキブリは気づくので寄り付かなくなります。
私はとくにこのホウ酸団子、作った経験があるわけではないのですが……
誰から教わるでもなく記憶にあったため、ホウ酸といえば団子という発想でした。
ホウ酸とホウ砂って何がちがうの
そんなホウ酸とホウ砂ですが、どちらも眼の洗浄、消毒に使うことができます。
むずかしいことはなかなか話せないのでざっくりちがいを答えます。
ホウ砂とは
「ホウ砂」はもともと、ホウ酸塩鉱物という、鉱物のひとつです。
昔から特殊ガラスやエナメル塗料の原料として使われていて、陶芸の釉薬(ゆうやく)の溶解剤にも使われたりします。
前述していますが夏休みになると、よく子どもたちが
「スライムを作りたいんですけど……」
とお店にやってくるので、自由研究にも大活躍します。
水に溶かすと弱アルカリ性になり、洗剤、防腐剤にも使われるほか、眼の洗浄、消毒にも使えます。
精製水などを用いたとき、1%以下の濃度で使用できます。
ホウ酸とは
対する「ホウ酸」は、ホウ砂に硫酸を反応させて作られたものです。
つまり原料は「ホウ砂」なのです。
殺菌、消毒のほか、殺虫、農業の肥料、難燃剤として、などなど、使い道がたくさんあります。
水に溶かすと弱酸性で、すこし毒性があります。
どのくらいの毒性かというと、食塩と同じくらい。
よっぽど大量摂取しないと人間は死にませんが、虫にとってはたいへんなものです。
結膜嚢の洗浄と消毒には、精製水などを用いたとき、2%以下の濃度で使用できます。
目薬の保存料にも使用されます。
用途にあわせて選ぶべし
もともと同じ原料で、似ているようだけれどビミョ~にちがうふたつ!
目を洗うのはどちらでも可能ですが、使用するときの濃度がちがうことに注目です。
ゴキブリ倒したいあなたはホウ酸を。
スライム作りたいあなたはホウ砂を選んでくださいね~。
今日もお客様と笑顔になれるような接客ができますように。
それでは元気にいってらっしゃい~。