医薬品売場のレジで作業していると、男性のお客様が胃腸薬をもって会計に来られました。
「お薬のことでなにかわからないことありますか」
と尋ねると「逆流性食道炎のくすりを探していたんだけど……」とお客様。
くすりを見ると、健胃作用や消化作用がある成分も入った総合的な胃腸薬のようでした。
あくまで症状を和らげるための市販薬
「逆流性食道炎を治す、お薬というよりも、今出ている症状をひとつひとつ和らげていく、というイメージで選ばれた方がいいですよ」
「なら、これでいいです。パッケージに書いてあるとおりの効果があるんですよね」
お客様はこのままお薬をお買い上げしたい様子でした。
でも、正直私はこの選択はちがうような気がしていて……
「少しお時間いただけますか。逆流性食道炎で悩まれているということは、私の想像ですが、たくさん出過ぎた胃酸の攻撃で痛みがあるということだと思うのです」
「そうですね、胃が痛かったり、胸焼けが起きたりもします」
いらない成分は摂取する必要はない
「そうすると、今お持ちになられたお薬だと、消化を助けたり胃の働きをよくする成分もあったりと、お客様のお悩みとは離れた成分も入っています」
たとえば、これがかぜ薬だったとして……
のどの痛みを止めたいだけなのに、せき止めの成分や鼻症状をおさえる成分なども入ったくすりをわざわざ選ぶ必要はないのです。
のどの痛みだけであれば、解熱鎮痛薬。
それも、イブプロフェンなど炎症をおさえる効果のある成分だけを選べばいいことです。
胃腸薬も同じです。
なんでも入っていればいいということはなく、むしろ多くの成分が入っていることで、余計な副作用のリスクも増やしていることもあります。
症状に見合った最小限の成分を
「すると、お客様のお悩みを解決してくれる成分の働きというのは……」
- 胃酸の分泌をおさえてくれる成分
- 胃粘膜を保護してくれる成分
この2つまでで十分だということがわかります。
そこで私が取り出したのは、胃粘膜の保護と修復をしてくれる「スクラルファート」と制酸成分、生薬の入った液剤のお薬。
「このスクラルファートは、胃粘膜保護の力がかなり優れている成分です。あと、胃酸を中和したり、排出を助けてくれたりする成分も入っています。胃痛や、胃酸が逆流して起きる胸焼けの症状がおさえられると期待できますよ」
「これは、液体なんですね。なんだかすぐに効きそうですね」
お客様はお薬の選択を変え、おすすめした液剤のお薬を購入されました。
剤型で処方内容が変わるお薬も
ちなみにこの液剤のお薬は、同じ名前でいくつもシリーズがありますが……
「胃痛」をメインにした同じようなお薬でも、剤型で処方内容が変わってきます。
液剤より顆粒、顆粒より錠剤の方が処方内容が多くなっています。
お薬の粒が大きくなるほど、浸透が遅くなるから胃の負担をかけないように消化酵素やなにやらを増やしてるのかな〜。
なんて、職場の男性次長とこの話をしたことも。
同じものだと思って剤型ちがいのお薬を選ぶときは注意ですよ〜。
余計なリスクを減らしてさしあげることも大切
お客様の中には「成分がたくさん入っていた方がよく効く」と思っている人が多くいらっしゃいます。
でも、たくさん成分があるということは……
- 自分に合わない成分もある
- 副作用などのリスクも増える
という可能性もあることを考えないといけませんね。
そのリスクを回避できるのは、われわれ登録販売者の存在だと思います。
お客様にお声がけして、お薬選びのお手伝いをしましょ〜。
それでは、今日も元気にいってらっしゃい!