風邪を引いて咳が出るんだけど、咳止めはどこ?と、年配の女性のお客様。
咳止めの売場をご案内しながらよくよく話を聞くと「東京から引っ越してきてからずっと咳が続く。きっと空気が合わないんだと思う」と言います。
「こちらに越されてどのくらいですか」
「もうずっと、何年も前」
「咳の症状はその頃から出ているんですか」
「そう、もうずっと。どの薬が効くのかしら」
風邪というのは続いて1週間から10日程で症状は治まるものです。
何年もその症状に悩まされているというのは、風邪ではなく他の原因が考えられます。
「今まで咳の症状で病院へかかったことはありますか」
「かかっても大して良くならないからねえ」
「2週間続く咳でも、風邪以外の原因が考えられます。市販薬の効き目の範囲ではないので、病院へ行かれた方がよろしいかと」
「そうよねえ。いつもは液体のような薬を飲んでいるんだけど、どれが一番よく効くの?」
「市販薬も常用すると良くないものですので、私は病院へ行くことをおすすめします。原因が分かるだけでも、気持ちが違いますよ」
「そうよねえ。これはどうかしら。よく効くかしら?」
そう言って、お客様は自身で選ばれた薬をかごに入れますので、飲んでも良くならない場合は必ず病院へ、と伝えると、そうよねえ、と言って去っていかれました。
このように、頑なに病院を選ばず、市販薬でどうにかしようとするお客様は沢山いらっしゃいます。
こうしたお客様が言うことには、大概が「病院の薬を貰っても治らないから」「大した薬を貰えないから」「とにかく病院にはかかりたくないから」というものばかりです。
市販薬は対症療法のお薬ですので、それこそ病気を「治す」くすりではありません。
あくまで今出ている症状を緩和させるだけなので、これを繰り返すことによって治療が遅れ、悪化させてしまうことだって考えられます。
今日まで上げてきた記事を読まれている方は、薄々気がついている人もいらっしゃるかもですが、私は自分でも思う程、くすりを売らない登録販売者だと思います。
何か服用薬があったり、今回のように市販薬の範疇を超えていると思えば、すぐに受診勧奨しますし、生活習慣の改善でどうにかなると思えば、自分の知識と経験を振り絞って養生法などアドバイスをして帰します。
この症状にはこの成分がいいからこの薬を勧めようと思うのも、専門的知識があって出来ることですが、私は敢えて薬を売らないという判断ができるのも、登録販売者の仕事のひとつだというように考えています。
薬を選ばないのは、決して資格者として手を抜いている訳でも、責任から逃れようとしている訳でもありません。
せっかく来店されたお客様を手ぶらで帰すことに申し訳なさを感じる前に、その方にとって最善の選択肢を与えてさしあげるのが優先なのではないかな、というのが、私の考え方です。
当たり前のように元気に過ごせる日々に感謝します。
皆さんの一日が健やかなものになりますように。
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