登録販売者試験の合格内定の新卒の彼女、仮名をさきちゃんとします。
さきちゃんと一緒に休憩に入りました。
売場はいよいよ夏商品と冬商品の入替えで、倉庫もごった返していました。
使い捨てカイロや湯たんぽなどのあったか商品もあります。
さきちゃんはあまり体をあたためるグッズは使ったことがないようで、しばらく商品をしげしげ眺めてから休憩に。
「首まわりをあたためるものもあるんですね。首もあたためた方がいいんですか?」
と、さきちゃん。
目や腰やお腹はイメージが沸くようですが、首をあたためることのよさが掴めなかった様子。
そうだねえ、と考える私。
例えとして正しかったかわからないけど、恐る恐る自分の見解を答えてみます。
「葛根湯あるじゃん」
「はい」
「あれはさ、汗をかきやすい人には不向きな漢方薬じゃん。体を温めて汗をかかせる漢方だから、汗をかく人は汗かき過ぎて体力消耗するから不向きなのよ」
「はい」
「で、肩や背中にこわばりを感じる初期の風邪の人に飲ませて効果を発揮するじゃない」
「はい」
「てことは、体を温めるものは、体のこわばりをほぐすことに繋がるんじゃないかと」
「なるほど」
「体を温めると血行もよくなるし、こりとかこわばりも和らぐって考えると、やっぱり冷やすよりもあたためた方がいいんじゃないかね」
「なるほどお」
私の見解が良かったかどうかはさておき、今まで試験勉強を一生懸命やってきたさきちゃんにとって、私の葛根湯の解説は新鮮に聞こえたようです。
「葛根湯って、風邪の初期に飲むもの、としか覚えてませんでした。それだけ覚えてればよかったので」
そう、試験勉強はそれでよかったのです。
でもこれからは違います。
薬の特徴、成分の作用、そういう知識をフルに引き出して、お客様に合った薬を選択しなければなりません。
登録販売者試験には、接客の問題は出てきません。
試験勉強だけでは薬を選ぶことができないことが、彼女も薄々気がついていたようです。
「風邪の引き始めって、例えば熱はないけど鼻水だけって状態でも飲んでいいんですか」
「葛根湯は鼻かぜも効能にあるから大丈夫だよ。むしろ熱があがりだしてきた人っていうのは、葛根湯を飲むタイミングを逃した人かもしれない。桂枝湯とか、ちがうものを選んだ方がいいかもね」
「そうなんですね」
葛根湯ひとつをとっても全然知識がなかったことに、さきちゃんは少し不安を感じたようですが、それは仕方の無いことです。
これから実務の勉強をしていくのです。
薬の接客の数をこなして、分からなかったら都度調べる、人に聞く。
そうして少しずつ覚えていって、自信をつけていくのです。
いよいよさきちゃんと実践的な話ができて、私も少し嬉しく思います。
登録販売者として自信をつけていくのは大変なことだけど、がんばる彼女に、私たちもサポートしていけたらなと思います。