「今月の目標販売数はあと〇個です。がんばって販売しましょう」
などという言葉とともに会社から販売を推奨される商品があります。
推奨販売品、推売品、推奨品などと呼ばれるものですね。
医薬品だけでなく健康食品、化粧品にも渡り指定されていて、同系統の商品で迷われるお客様がいたらそちらの商品にスイッチさせる……など。
会社によっては厳しいノルマがあったり、社員同士の競争があったり。
この仕事を嫌う登録販売者の人、ドラッグストア勤務の人も多いのではないでしょうか。
なぜこの仕事が嫌われるのか
やはり利益優先になりがちなところだと思います。
そして推奨販売品をたくさん販売した人は評価するのにわかりやすいです。
お客様を思って最善の選択をしたと思っても、より多くの粗利がとれなければ会社にとって得ではないと判断され、評価されるどころか怒られたり出世もできなかったりする。
私は推奨販売品をすすめて売ることに関しては悪いことではないと思っています。
実際に優れた商品もあると思うし、同じ成分、同じ効能のくすりであれば、より価格がお手頃のものの方が喜ばれる場合もあります。
そして実際によかったという人もいるから、再度の購買に繋がることもあるのです。
でもそれは、お客様のことをよく見て考えた上ですすめているから得られる結果だと思います。
「推奨品を売りたい! 成績をあげたい!」
という気持ちで販売していると、大切なことを見落としてしまう気がします。
見落としてはいけない「大切なこと」とは
脂肪を落としたいというお客様がいました。
推奨品がある、と思った資格者が防風通聖散の推奨品をすすめます。
商品のいいところをたくさん並べて、見事購入に繋げたのだと思います。
後日、同じお客様が来店され、店長を指名されます。
「なにかございましたか」と尋ねると「この薬をすすめられて飲んだら死にかけたんだよ」とお客様。
差し出されたのは開封された防風通聖散の推奨品。
お客様は血圧の薬を服用中でした。
でも、その当時は服用薬のヒアリングはなく、資格者はその薬を販売。
それを飲んだお客様は泡を吹いて倒れ、救急車で搬送されました。
血圧の上昇を招いたのです。
幸いお客様は無事に回復され、来店に至りました。
というようなこともあるかも、という、推奨販売品のちょっとこわい話です。
先日のキャップとまっすーのセミナーで、私たちは商品越しにお客様を見がちという話を聞き、このブログでも紹介させていただきました。
この例はまさに商品ばかりに焦点を当てていて、お客様のことはまったく見えていません。
まずはそれを使う人がどんな人なのかを見なければ、商品を売ることはできないのです。
目先の利益よりも長いシナリオを意識
私は資格者でありながら、会社の正社員でもあるので、会社の利益を求められるのは当然です。
でもその利益を得るのも、ひとつの推奨品を推しすすめることだけに注目するものではないと思っています。
その先にはもっと長いシナリオがあることを意識しなければならないと思うのです。
社員同士の推奨品販売の競争が激化している会社は大体売場が汚いという話もあります。
売場のメンテナンスをする暇があるならひとつでも多く商品を売らなければならない……競争苦手なゆとりの私は生きられない世界です。
と、ここまでいろいろ書いてきましたが、結局のところお客様のにこにこ笑顔をひとつでも多く掴んだ方が、自分にとってもお店にとっても楽しくて幸せなことだなあと思うのです。
ひとりでも多くの人が毎日笑顔でお仕事できますように。
私もきょうも笑顔でがんばります。